牧場こぼれ話・2009

2009年6月1日 Best Luck by 飯田正剛  第6回

牧場や競馬場を疾走する馬たちを見つめているうちに、気がつけばもうダービーが終わっている。そして次のダービーへの夢を買っていただく季節が、すぐそこまでやって来ています。今年もセレクトセールの時季が来ました。将来のダービー馬を探し、そして夢を買うためのセールに、今年もたくさんの方々の参加をお願いいたします。

千代田牧場は今年、6頭の1歳馬(すべて牡馬)と15頭の当歳馬たちを上場します。これまでも毎年、数の上でも血統面でも、注目される馬たちを上場してきました。3歳時にシリウスSを勝ち、JCダートにも出走したドラゴンファイヤー(父ブライアンズタイム、母マジカルウーマン)もこのセールでご購入いただいた1頭です。そして今年も数、血統ともに、注目を集める牧場のひとつであると自負しています。

6頭の1歳馬と15頭の当歳馬。全体ではそのうちの4頭がアグネスデジタルの牡馬です。キングカメカメハの男の仔も2頭います。そして今回は、7月13日のセール初日に上場する1歳馬たちを取り上げることにしました。まず一番手は、初日に登場する150頭余りのなかでも、かなりの注目を集めるだろうと思われる1頭、シルクビッグタイムをおじに持ち、メダリアドーロ(Medaglia d'Oro)を父とする仔です。シルヴァーグレイル2008この種馬の仔はおそらくこの馬だけでしょう。この仔のセレクトセール上場のニュースはアメリカでも話題となり、雑誌にも取り上げられています。このように海外からも注目されている1頭なのです。

メダリアドーロ産駒の活躍は、皆さん良くご存知だと思います。その代表が今年のケンタッキー・オークスを、レース史上最大着差となる20馬身と1/4差で圧勝したレイチェルアレクサンドラ(Rachel Alexandra)です。それだけでもすごいのですが、彼女はさらに、トリプルクラウン第2弾であるプリークネスSをも勝ってしまいました。5月16日のピムリコ競馬場、スタートから積極果敢に行った彼女をダービー馬マインザットバード(Mine That Bird)が追い詰める展開に、ゴール前はものすごい声援。一番人気に押してくれたファンの期待に応え、彼女は牡馬たちの追撃を退けて勝利したのです。牝馬のプリークネスS優勝は1924年のネリーモース(Nellie Morse)以来85年ぶり、史上5頭目となる快挙でした。6月6日には第3弾となるベルモントSが行われます。ベルモントパークのウェブサイトでは毎日、有力馬たちの調教の様子が伝えられています。レイチェルアレクサンドラも25日の記事を読む限りでは順調の様子(この日はプリークネスS以来、初めて強めに追う)。今度一番人気になるのはどうやらダービー馬のようですが、彼女には千代田牧場のためにもがんばってもらいたいところです(追記:結局出走を回避しましたが、今後の活躍をおおいに期待しています)。

こんなふうに初年度世代からすごい馬を出す、と確信していたわけではないのですが、メダリアドーロを大変気に入って期待したからこそ、シルヴァーグレイルだけでなく、この年はアメリカに置いている繁殖ロマンティックロマンス(父Rahy)にもつけました。生まれたのはやはり牡馬で、その仔は7月20、21日のキーンランドでのセール“Fasig-Tipton July Selected Yearling”に上場されます。

実は気に入ったというだけでなく、メダリアドーロとは浅からぬ縁があったのです。メダリアドーロの父は、サドラーズウェルズの仔であるエルプラド(El Prado. 他にターフクラシック招待S勝ち馬キトゥンジョイなど活躍馬多数を出している)。そのエルプラドが2歳のとき、「飯田さん、この馬を買いませんか」とアイルランドから話が来ました。でも買わなかった。私が買っていたら、今頃、日本で種馬になっていたでしょうか?

私が買わなかったから、エルプラドはアメリカで大活躍する馬たちを送り出したのかもしれません。ですから、2006年は9月と11月の2回、忙しいなか時間をつくり、ケンタッキーの牧場にメダリアドーロを見に行ったのです。

そして今年のセールに、めぐりめぐった結果である1歳牡馬を皆様に買っていただくことになりました。プリークネスSで見せたレイチェルアレクサンドラの果敢なレース振り。私どもの牡馬も、彼女と同じように勇気と強い心を持った馬であると信じています。ぜひ、ご購入いただけますよう、よろしくお願いいたします。

スパークルジュエル2008

さて、他の5頭も同じようにすばらしい男の仔です。父キングカメハメハ、母スパークルジュエルの芦毛。母スパークルジュエルはケンタッキーのセールで手に入れた牝馬です。アンブライドルズソングの美しい女の仔。現在、若手ナンバー1の呼び声高い栗東の藤原英昭調教師が、「是非、当厩舎に」と声をかけてくれました。美浦の久保田厩舎へと考えていたのを変更し彼女を藤原厩舎に送ったのです。しかし股関節を傷めてしまい、これ以上無理をさせるより、繁殖としての能力を生かしてあげようという思いから3歳のうちに牧場に戻しました。競走馬としてはその力を試すことができませんでしたが、これからは母として、サンタアニタ・オークスなどアメリカでG1を2勝したおば、ゴールデンバレー(Golden Ballet)のような活躍馬を送り出す役目をもらったのです。産駒はメダリアドーロの仔と同じ芦毛でも少々違うタイプかもしれません。どちらかお好きな方を、いえいえ、どうぞ両方をお買い上げください。

コクトビューティー2008

姉にオークス馬のスマイルトゥモローを持つのは、父ネオユニヴァース、母コクトビューティーの牡馬。兄であるレオエンペラーはマーチS4着。こちらは黒鹿毛の凛々しい立ち姿がなんとも魅力的な男の仔です。

ダイヤモンドの2008(栗毛)は父がアグネスタキオン。近親にはダンスパートナー、ダンスインザダーク、ダンスインザムードなど、オープン馬が目白押しです。ネオカラーの2008(栗毛)の父はアグネスデジタル。祖母であるナギサはエリザベス女王杯4着。おばサウンドザビーチはTCK女王杯の勝ち馬です。もう一頭の栗毛、ゴールデンプランクスターの2008の父はグラスワンダー。姉のコパノスピーキングは新馬勝ちを含め3勝、おばラスカルラス(Rascal Lass)は米G1ファンタジーSを勝ち、近親のスカイジャック(Sky Jack)もやはりアメリカで重賞4勝を挙げています。

ダイヤモンド2008
ネオカラー2008
ゴールデンプランクスター2008

千代田牧場が自信を持って送り出す6頭の1歳馬たち。皆さまの夢をかなえるために、私を含めスタッフ一同が手塩にかけて育てきた牡馬たちです。夢を買うためのセールに、今年もたくさんの方々の参加を願うとともに、千代田牧場の馬たちのご購入をよろしくお願いいたします。

次回のコラムでは7月14、15日に上場します当歳馬たちに触れたいと思います。

なお、上場馬一覧及び各馬の詳細と写真は、別なセクションに掲載されておりますのでそちらをご参照ください。