2010 #07
〜超一流の調教師であり、人格者・・・池江泰郎調教師〜
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来年の2月に定年を迎える池江泰郎先生とは、20年来のお付き合いになるでしょうか。千代田牧場から初めて預かって頂いたのは森本忠治オーナーの馬でシンボリルドルフの初年度産駒でした。この子は3勝を挙げました。所有馬第1号として池江厩舎でお世話になったのは、父ノーアテンション、母スカッシュソロンという1991年生まれの牝馬で、名前はマイダナウェイ。マックイーンと共演した女優さんの名前から付けました。父・飯田正の名義で、メジロマックイーンを担当していた早川厩務員が担当して下さいました。成績は15戦1勝2着3回。勝利ジョッキーは、現在調教師の村山明騎手でした。ああ、本当に懐かしいですね。
池江先生の長く輝かしいキャリアの中には、多くの名馬たちがズラリと名を連ねています。初のG1優勝はメジロデュレンの菊花賞。メジロデュレンは翌1987年の有馬記念にも勝ちました。そして2度目の菊花賞奪取はメジロマックイーン。メジロマックイーンはその後、2度の天皇賞(春)、宝塚記念を勝ち、G14勝、G25勝という、すさまじい成績を残しました。他にもトゥザヴィクトリー、ステイゴールド、ゴールドアリュール、グレイトジャーニーとG1級を含め重賞勝馬の名を挙げたらきりがありません。
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当場で初めてディープインパクトの仔が生まれた時には、ご子息の泰寿調教師も一緒に、親子で見にきて下さいました。 |
その中でも、特別な1頭と言えるのが、記憶に新しいディープインパクトではないでしょうか。2004年暮れのデビューから7連勝。7勝目は菊花賞です。シンボリルドルフ以来21年ぶりの無敗の3冠馬となりました。国民的英雄になったディープインパクトを管理する、そのプレッシャーは大変なものだったはずです。でも、池江先生はジョッキー時代から厳しい修行に耐え、努力に努力を重ねてきた方です。お手馬をベテランに取られたり、圧倒的人気の馬で負けて、厩舎に戻るのが辛く、淀の土手から逃げ出したかったこともあったと聞きました。たくさんの苦労を重ねてきた先生だからこそ、管理馬があれほど有名になっても、普段と変わらず平常心でいられるのかもしれません。
ディープインパクトが宝塚記念を勝った翌日に、真っ先に牧場を訪ねて下さり、「やったよー」と拳を上げて報告して下さいました。喜べて、とても嬉しかったです。
それより前の2002年、オークスで私の所有馬スマイルトゥモローが優勝した時のことです。「おめでとう、良かったね」と心から祝福して下さった池江先生。その時の私は舞い上がってしまい、気が回らなかったのですが、2着は池江厩舎のチャペルコンサートだったのです。さらに数日後、先生から牧場にドンペリが届きました。本当に嬉しかったし、池江先生の温かい人柄が胸に沁みました。
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当歳時のバーディバーディ |
そんな素敵な池江先生の厩舎で今、千代田牧場の生産馬が頑張っています。6月6日の東京競馬で、GのユニコーンSを快勝したバーディバーディ。同馬は2007年のセレクトセールで池江先生の目に留まった馬です。父ブライアンズタイム、母ホームスイートホーム、蹄が少々狭さく気味(小さくて立っている)の当歳馬でした。
「蹄が少々問題だけど、あなたの牧場の馬だから買うことに決めました。十分に気を配って下さいね」
オーナーと池江先生の期待に、牧場のスタッフは全力を尽くし、厩舎へ送り出しました。
結果、芝のデビュー戦は6着だったものの、2戦目のダートを快勝。3戦目を東京競馬場で勝った時、京都競馬場にいた私に、池江先生が電話でおっしゃいました。
「芝でもダートでも、どちらでも好きなダービーに行けるよ!」
そこで、まずは芝のG2スプリングSへ。11着でしたが、再度芝へ挑戦、G1皐月賞へ果敢に挑んだものの結果は12着。ダートの方が得意ということが証明されました。そこで、園田競馬場で行われた兵庫チャンピオンシップへ出走すると、ぶっちぎりで優勝。日本ダービー出走も可能でしたが、ダートのG3ユニコーンSを勝ちに行きました。
現時点では3歳のダート王。ドバイのレースにも招待されましたが、今年は辞退しました。来年、ドバイワールドカップに招待されたら、胸を張って出走したいと願っています。その頃には既に先生は引退されており、バーディバーディは息子さんである池江泰寿調教師の厩舎にいるでしょう。里見美恵子オーナーは
「池江先生も一緒にドバイに行きましょうね」
と今から、池江先生と行くドバイ遠征を楽しみにしています。
ドバイの前に、当面の目標となるのが7月14日大井競馬場で行われるジャパン・ダート・ダービー。まずはこのレースに勝ちたいです。
ユニコーンS
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池江先生は馬も好きですが、犬も大好きです。以前、我家でビーグルの子犬が生まれ、メジロ牧場の獣医さんに貰って頂いたことがありました。先生はメジロ牧場でその子に会うたびに、私たちに「元気にしとったよ〜」とニコニコ報告して下さいます。一目惚れだったそうです。初めてその子と会った日の帰りには、思わずペットショップに立ち寄ってしまったそうで、そこで一匹の柴犬と出会いました。
「はじめは買う気はなかったんだけど、振り向いたら、その子犬がボクのことを見つめていたから、そのまま連れて帰っちゃった」
という運命の出会い。名前はチビマル。家族のように大事にされ、16歳になった今も元気だそうです。
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さて、6月27日の福島競馬5レースの新馬戦を、千代田牧場生産のディープインパクトの牡馬、ヒラボクインパクトが快勝しました。パドックで尻っぱねをする様子、出遅れて外から追い込むレース振りなど、お父さんを彷彿とさせるところがありました。母は千代田牧場を代表する牝馬ドリームカムカムです。思わず涙が出てしまうくらい、とにかく嬉しかった。池江先生のことを思うと、その嬉しさも2倍、3倍でした。
来年の2月で引退される池江先生、本当にもったいないと思います。最後に千代田牧場のバーディバーディでG1フェブラリーSを勝ち、引退に花を添えられたら、こんなに嬉しいことはありません。私たちも先生に負けないよう、千代田牧場の歴史を作っていきます。これからもどうぞ、よろしくお願い致します。
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7月12日と13日の2日間、今年もノーザンホースパークでセレクトセールが行われます。ホームページにも情報を掲載している通り、千代田牧場では、12日に1歳馬7頭、翌13日に当歳馬7頭を上場します。バーディバーディやフサイチセブン同様の活躍が期待できる馬がずらり。現地に足を運んで、実際に馬たちを見て頂ければ、その質の高さを実感して頂けると思います。夢を買うなら、千代田牧場の馬!何しろ、池江先生の折り紙つきですから、間違いありません。
それでは、セール会場でお会いしましょう。
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