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2011 #5

〜桜花賞を振り返る〜

 汗ばむほどの日差しと満開の桜、そして真っ青なターフ。そんな素晴らしい舞台で行われた今年の桜花賞で、千代田牧場の生産馬ホエールキャプチャとトレンドハンターが2、3着の大健闘を見せてくれました。私の目は終始ホエールキャプチャに釘付けになっていて、青鹿毛の馬体がいったいいつ上がってきたのかわかりませんでしたが、ともに大外を回り、ホエールに引っ張られるように3着でゴールしたのがトレンドハンターでした。

 優勝したらスタッフみんなで祝勝会をやろうと、飛行機を乗り継いで一目散に牧場に飛んで帰るつもりだったのですが、レース後は悔しくて、しばらく競馬場から動けませんでした。ですがその間、たくさんのオーナーや関係者の方々が「さすが千代田の馬はすごいね」と声をかけて下さり、電話やメールもたくさん頂きました。なんとありがたいことだろうと思います。 先月のコラムでも触れた通り、トレンドハンターは脚元に不安がありましたし、いくらホエールキャプチャが心身ともに丈夫だとはいえ、発走前の私の頭の中には一瞬、最悪のシナリオも浮かびました。ですから、2頭が無事にゴールしてくれたことには心底ほっとしました。しかも桜花賞で2、3着。ジョッキーと厩舎関係者は本当によく頑張ってくれたと思います。

 しかし、牧場に帰ってグリーンチャンネルのパトロールフィルムを見れば見るほど、悔しさは込み上げるばかり。その悔しさは火曜日の夜に頂点を迎えました。力は負けていない。特にトレンドハンターはオークスでこそ、より力を発揮できるはず。松田博資調教師から電話があったのは、そう気持ちを切り替えて迎えた木曜日の昼休みのことでした。
 「トレンドハンター右第一指節種子骨々折。復帰に一年以上」
にわかには信じられませんでした。オークスはもちろん、その後もホエールと一緒にこの2頭がこの世代の牝馬重賞戦線を引っ張っていくものと期待していましたし、やっと花開いた血統だっただけに、涙をこらえきれませんでした。恥ずかしい話ですが、真っ昼間からヤケ酒。せっかくのシャトーフィジャックの2002年が1本空いてしまいました。

 
4月22日 静内に戻ってきました
 トレンド骨折のニュースは発表後すぐネット上に流れ、翌日のスポーツ紙でも報道されました。これがフラワーカップを勝つ前だったら、ここまでニュースになることはなかったでしょう。骨折を知り、またたくさんの方々が気にかけて下さいました。応援して下さった皆様には、本当に感謝申し上げます。何とか復帰させたい、オークスで背負うはずだった期待、その能力をもう一度レースで発揮させたいというのが私の気持ちです。レントゲン検査の結果は正直芳しいものではありません。このまま競走生活を終える可能性もありますが、私もスタッフも持てる力を結集して復帰を目指したいと思っています。


   もうひとつ、ホエールキャプチャの祖母エミネントガールが、桜花賞の1週間後に、また1頭、英ダービー馬Nashwanの血を引く牝馬を産んで、この世を去りました。ルールオブローを父に選んだことで、Kingmamboの血が加わったこの仔はどんな馬に成長するでしょうか。私がエミネントガールの母タレンティドガールをNashwanと交配するためにイギリスに連れて行ってから20年。トレンドハンターの祖母スターマイライフを米国セリで購入してから16年。私の選択は間違っていなかったということを、今年の桜花賞が証明してくれました。

ホエールキャプチャトレンドハンター

 僚馬は長い休養に入りましたが、ホエールキャプチャには、オークスという次の大きな舞台が待っています。もう2着はいりません。重賞勝ちを経験している東京コース。きっとそのときと同じように、颯爽と馬場を駆け抜けて、一番でゴールしてくれる。そう信じて、オーナーとともに、また声を限りに応援したいと思います。

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さて、5月16日は船橋競馬場で千葉トレーニングセールが開催されます。当場からは5頭の上場を予定しています。各馬の情報は、当HPでご紹介しておりますので、どうぞご覧下さい。例年、セリ当日は晴天で汗ばむ陽気です。今年も天候に恵まれることを祈りつつ、皆様には日焼け対策万全でお越し下さいますよう、よろしくお願い致します。でないと、夏本番を前に、私のように真っ黒になってしまいますから。

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