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2011 #12

世界と戦う馬たち

 ジャパンカップはブエナビスタの勝利が印象的でした。将来はどのような仔を産むのでしょうか。楽しみですね。
 当場も負けないよう、世界に通用する馬づくりを目標にしています。オーナーの皆様の夢実現をサポートするためにも、優秀な繁殖牝馬の導入は欠かせません。

 米国ケンタッキー州のレキシントンでは毎年11月に、繁殖牝馬と当歳をメインとした2つの大きなセリが行われます。私は9月の1歳セリにも毎年行っていますが、11月は既に結果を出している優秀な馬を見られることが楽しみのひとつです。ブリーダーズカップに出走して、そのままセリに上場してくる馬もたくさんいるので、完成された馬の姿を間近で見たり触ったりできることは、私にとって非常に贅沢な勉強の時間です。

 セリの前には、昨年に続き、今年もチャーチルダウンズ競馬場で行われたブリーダーズカップを観戦しました。2日間に渡る15のレースに、世界中からその部門のトップホースたちが集まります。昨年は当場の米国生産馬ミリオンセラーが出走しましたが、今年は当場繁殖の関連馬たちが大活躍しました!日和も昨年の凍えるような寒さとは打って変わって心地よく、私もお酒が進む進む。

 1日目のブリーダーズカップ・ダートマイルではレディジョアンの半弟Shacklefordが2着。ロマンティックロマンスの甥Tres Borrachosが3着に健闘しました。
 ファシグティプトン・ノベンバーセールでレディジョアンを購入したのが一昨年。そして今年、Shacklefordがケンタッキーダービー4着、プリークネスS優勝、ベルモントS5着とクラシック戦線で活躍しました。日本と違って米国の三冠はケンタッキーダービーから中1週でプリークネスS、さらに中2週でベルモントSが行われるという過酷なスケジュールです。三冠達成はもちろん、状態を維持して3戦全てに出走することも容易ではありません。ところが、Shacklefordは前哨戦フロリダダービー2着から上記3走に加えて、夏もハスケル招待H2着、トラヴァースSとGI戦線をタフに走り続けました。ホエールキャプチャも頑張り屋さんですが、Shacklefordの強靭さは並ではありません。
 プリークネスSでは、テレビのコメンテーターがこの馬の入れ込みを「半端でない集中ぶり」と表現していました。ブリーダーズカップでも、パドックに姿を見せたのは最後の最後。米国の競馬場はパドックの中に装鞍所があって、ファンの前で装鞍します。周回する時間は短いですが、ビッグレースの日は関係者とファンでパドックの内も外もカメラのシャッター音と声援で大騒ぎ。入れ込む馬は少しでもその場にいる時間を短くしたいということなのでしょうが、登場があまりに遅いので、管理するDale Romans調教師が心配になって電話を入れている場面を目にしました。
そのRomans師に預かってもらっていたのが、3着に入ったTres Borrachosのおばロマンティックロマンスです。

Shackleford鞍上Castanon騎手と当場スタッフ

 2日目、シリーズの中でも最高峰のレース、ブリーダーズカップクラシックを勝ったのは4歳牡馬のDrosselmeyer. 昨年のベルモントSの勝馬で、私が6年前にキーンランドの1歳セリで購入したスパークルジュエルの甥にあたります。来年からケンタッキーのウィンスターファームで種牡馬入りすることが決まりました。母Golden Balletは昨年のキーンランド・ノベンバーセールに上場され、現在はアイルランドに移動しています。一方のスパークルジュエルは、08年の初仔クリーンエコロジー(牡 父キングカメハメハ)が新馬勝、デイリー杯2歳S(G2)4着。2歳サトノジュエル(牝 父アグネスタキオン)は来年のクラシックを期待する動きを見せていましたが、残念ながら現在骨折療養中。その全弟1歳も期待に違わぬいい動きを見せています。当歳はスペシャルウィークの女の子。この血統が世界で活躍してくれるよう、彼女の仔たちにも頑張ってもらわないといけません。

 レディジョアンとスパークルジュエル、繁殖セリと1歳セリですが、どちらも私が馬体に惚れて購入した馬です。レディジョアンは競走成績も一流でしたが、買った当時、これほど近親が活躍してくれることは予想していませんでした。ブラックタイプが濃くなっていくのが嬉しくてたまりません。牝馬を持つと、後々までこうして楽しみが広がるのがいいですね。

レディジョアンスパークルジュエル

 さて、私が今回セリで購入したのは父タピットの芦毛の4歳牝馬です。Star of Sapphireという名の通り、端正な顔つきとバランスのいい好馬体に惹かれました。お腹にはGiant’s Causewayを受胎しており、今月、日本にやってくる予定です。3歳の全妹Zazuは今年GI2勝2着2回。ここまで11戦して1着4回2着5回3着1回、それ以下はGIの5着のみという成績で、故障のためブリーダーズカップには出ませんでしたが、復帰すれば来年の活躍が非常に楽しみな馬です。母馬も同じセリの次の日に上場しており、こちらもとても良い馬でした。蹄にケアが必要な状態でしたが、それでも落札額は85万ドル。蹄がまともなら、ミリオンを越えていたと思います。その当歳も30万ドルで落札されました。

スターオブサファイア

 その他、キーンランドのセールにはブリーダーズカップ・レディーズクラシックの勝馬Royal Deltaが上場されました。父エンパイアメーカーの今年一番の活躍馬。セリ2日目の最後から3番目の上場でしたが、場内はその瞬間を見ようとする人たちで一杯。100万?200万?300万とセリの進行役がお代を伺い、300万の声が掛かるや否や、400万、500万、600万と、100万ドル単位で値段が上がっていくのですから、常人の理解できる域を越えていますよね。850万ドルで決着がついた瞬間、固唾を呑んで見守っていた観衆から拍手が沸き起こりました。
 エンパイアメーカーの産駒は他にも2歳Grace Hallがブリーダーズカップ・ジュヴェナイルフィリーズ2着。種馬が既に日本に輸出されていることもあって、セリに上場された当歳にもいい値がついていました。当場でも来年は、桜花賞3着トレンドハンターの初仔を含め、5頭の産駒が生まれる予定です。

前述のレディジョアンはディープインパクトを、スパークルジュエルはキングカメハメハを、ロマンティックロマンスはOld Fashioned(父Unbridled’s Songの新種牡馬)を受胎しています。今月中には来年度の出産予定をHPでお知らせ致しますので、楽しみにしていて下さい。

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ちなみに、昨年ブリーダーズカップを沸かせて20戦19勝で引退、年度代表馬となったゼニヤッタ。引退直後に競馬場でファンに公開された以外は、繋養先の牧場スタッフに聞いても、トップ以外は目にすることもできないシークレットなのだそうです。Bernardiniとの初仔がお目見えする日が楽しみですね。

今年も早いもので、これが最後のコラムです。皆様も年の暮、何かとお忙しいことと思いますが、お体に気をつけて、良い年を迎えられまようお祈り申し上げます。来年も千代田牧場をどうぞよろしくお願い致します。

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