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2012 #12

メンコはブルーに赤い・・・GI優勝おめでとうございます

 次のコラムは彼について書こうと、温めていたエピソードに頭を巡らせていたら、一躍「時の人」になってしまいました。エーシントップの京王杯2歳S、サダムパテックのマイルチャンピオンシップ、ハクサンムーンの京阪杯と3週連続の重賞制覇。今月は私の愛すべきせっかち仲間、西園正都調教師です。

 私も自他ともに認めるせっかちですが、西園さんのせっかちさ加減も相当です。牧場にも突然やってきます。いきなり現れるので、私が不在のこともしばしば。そして座るより先に「馬を見せて」という。アポなしですぐ馬を用意するのは無理だから!
 馬も似るのでしょうか(笑)。最近の逃げ馬の代表といえば今年マイラーズC連覇を達成した西園厩舎のシルポート。先月のマイルチャンピオンシップでも大逃げを打ち、4着に粘りました。京阪杯を勝ったハクサンムーンは逃げ切り勝ち。京王杯2歳Sのエーシントップも逃げ・先行でデビューから3連勝中です。

 私と西園厩舎との縁は2001年の小倉2歳Sの時からです。当場生産馬ロングユウシャが1番人気だったのですが、勝ったのは15番人気の西園厩舎所属の牝馬タムロチェリー。顔も怖いがそれだけではない「恐るべき西園厩舎」との出会いでした。その後、タムロチェリーはファンタジーS(G3)は10着に敗れましたが、阪神ジュヴェナイルフィリーズで西園厩舎開業3年目にして初のGI勝ちを飾りました。
 当場で西園厩舎に初めて預かってもらった馬が、これも縁かタムロチェリーに敗れたロングユウシャの全弟ファンドリビート。残念ながら未出走のまま抹消と結果は残せませんでしたが、その後も西園さんとは良いお付き合いをさせて頂いています。

 一見、鬼瓦顔で怖い西園さんですが、中身はとても繊細で人情家です。マイルチャンピオンシップのサダムパテックの鞍上・武豊騎手は落馬負傷以来、2年ぶりのGI制覇でした。ゴール後、ファンの温かい声援に包まれた彼を、西園さんは「競馬界の宝」と称えました。また、ハクサンムーンで京阪杯を勝った酒井学騎手は、デビュー当初から西園厩舎の馬に乗り、所属期間を経て大きく花開きました。今年の春も、負傷休養明けの酒井騎手に人気馬を用意し、酒井騎手もその期待に応えるなど、西園厩舎の通算勝鞍の1割強を酒井騎手が挙げていますが、コンビでの重賞制覇は先月の京阪杯が初めて。検量室に戻ってきた酒井騎手が師匠の西園さんと抱き合って号泣する姿に、私ももらい泣きしてしまいました。

 楽しいエピソードもあります。毎年9月に出掛けるアメリカのセリ。今年は飛行機が西園さんたちのグループと一緒になりました。シカゴからケンタッキー州レキシントンへの国内線は座席が1列+2列の小型飛行機。
「あの飛行機小さいけどビジネスクラスなんかあるんかなあ?」と言う西園さんと松元茂樹調教師。
「ビジネスなんかないよ。みんなエコノミーの狭い席だよ」
「そんな。だって僕たち、3万円余計に払って広い席というのを買ったよ」
「僕もそれ欲しいって言ったけど、2席しかないからって買えなかった。2人ともええなあ」と羨ましがる野中賢二調教師。
この小さな飛行機にビジネスクラス?というのが想像できず、乗り込んでみると確かに2人の席は前が多少広い。なぜかというと非常口のところだからです。

「いやあ、これええなあ。3万円払った価値があるかもしれん」
とご機嫌な2人に、グラマラスなフライトアテンダントがこう言い放ちました。
「お二人さん、英語が話せないのなら席を移動してください。この席は非常事態の時、アシストしてくれる人が座るの。だから英語ができないとだめなの!」
「ええ、うそやあ。3万円払うてるのに、それはないわ。いやや」
と駄駄をこねる2人でしたが、「Let’s move !」と言われて、しぶしぶ後ろの席に移動。失礼とは思いましたが、お腹を抱えて笑ってしまいました。2人の情けない顔といったら。3万円を払わずに済んだ野中調教師も大笑いです。帰りの便でも同様に頑張ってみたものの、やはり強制移動。爆笑でした。
 さらに日本に帰国してから、顔を合わせた西園さんの第一声が、「事情言うたけど、3万円戻ってこんかった」。
ごめんなさい、また笑ってしまいました。

 じつは西園さんには15歳下のとてもかわいらしい奥様がいらっしゃいます。今でこそよくある年の差婚ですが、西園さんの当時なら「詐欺師、ペテン師、○○師」と言われても、仕方がないのでは・・・?(笑)
 ですから皆さん、西園さんが競馬場で若くてきれいな女性と一緒にいたからといって、怪しんではいけません。今でも奥様とご一緒にみえたときは「親子じゃありませんから!」と必死にアピールしています。

 もし自分で牡馬を使うことがあったら、西園厩舎で馬名は「オレタチセッカチ」と決めていたのですが、現在オレタチセッカチは園田競馬一のせっかち調教師・田中範雄厩舎で奮闘中。
 次回、西園厩舎でお世話になるときは「オレタチナイーブ」でいかがでしょうか?

  
(左、中央)西園厩舎で3勝を挙げたミルフィアタッチ
(右)11/30 西園調教師と牧場にて(私は不在。西園さん緊張してます)


追伸: ちょうどこのコラムの原稿を準備している11月30日に西園さんが牧場にみえました(私は不在でしたが、今回は10分前に連絡がありました!)。週末の予定を伺うと、北海道から一旦栗東に戻り、明日土曜は中山、日曜は阪神で夜は九州に飛ぶのだそうです。すごい行動力ですね。駅や空港をせっかちに歩く西園さんの姿が想像できます。

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 今年も一年、ご愛読ありがとうございました。また来年もどうぞよろしくお願い致します。皆様、良いお年を・・・。

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