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2013 #3

みんな年とったなあ・・・思いがけない同窓会(?)

 先日、10年ぶりに美浦と栗東を訪ねました。栗東周辺に新しい施設ができたことや、トレセンも厩舎が新しくなり、次々と新しい技術が導入されていることから、向学のため、見学させて頂くことにしたのです。

 まず1月中旬に栗東へ。トレセン訪問日は朝から、栗東では一冬に一度あるかないかの本格的な雪景色で、会う人会う人に「どうりで雪が降るわけだ!」、「声がするから、まさかと思ったら!」と歓迎されました(笑)。場長の井上真氏とは、彼がJRAに入会して間もない頃からのお付き合いで、かれこれ30年。診療所長の横田貞夫氏には、ピースオブワールドが骨折で桜花賞を断念したときにお世話になりました。お二人とも、その日は神戸にある妙光院の馬頭観音祭から帰られたところで、お忙しい中でしたが、いろいろな話を聞かせて頂き、思い出話で盛り上がりました。

 2月の中旬には美浦へ。美浦トレセンの開場は昭和53年。獣医科を卒業してから、研修医として診療所で3ヶ月お世話になりました。千葉の牧場に戻ってからも、月に三度は美浦に顔を出していました。今は調教師の方々が助手だった頃です。独身寮に泊めてもらって、みんなで二日酔いになるほどお酒を飲んで語り明かし、翌朝はへろへろで仕事に出て行く。そんな思い出のある美浦は私にとって馴染み深い場所です。

 現在は二ノ宮厩舎と伊藤大士厩舎が入っている北の新しいモデル厩舎を訪ねました。私が高校生の頃に出場した昭和49年の茨城国体の馬場があった場所ですが、そんな面影はなく、広々とした2棟の厩舎に変わっています。馬房はトレセンでは初となる対面式で廊下も広く、屋根の一面は採光窓になっていて、明るく風通しのよい作りになっています。厩舎の前や洗い場も広くて、引き運動をするスペースも十分でした。

 二ノ宮厩舎で懐かしい人に遭遇しました。美浦ができた当時からお付き合いのある永田獣医です。
「あれ、珍しいね!いくつになった?」
「ぼくは60」 63歳になったという永田さんに対して、若さをアピールする二ノ宮師。
「オレなんかまだ56だよ」
「今は元気でもね、この年になるとね、ひとつ崩れるとガタが来るのは早いよ」
こんな会話に、しみじみと時の流れを感じました。

 数十年ぶりに会った人もいました。当時のヘルメットをかぶった姿しか印象になくても、不思議とわかるものですね。通りですれ違いざまに、あるいは馬上に、懐かしい顔を発見しては声を掛け、声を掛けられ・・・。 昔お世話になった厩舎の馴染みの厩務員や助手の方々からは、
「またいい馬持ってきてよ。オレがしっかりやるからさ」
「競馬学校で社長の講義を受けたことを覚えています」 (騎手課程で、牧田和弥調教師たちがいた6期生から三浦皇成騎手ら24期生まで19年間、馬産についての講義を担当していました)
嬉しい声をたくさん掛けて頂いて、勉強にきたはずが、思い出話のほうが長くなってしまいました。おかげで、昔の記憶を掘り起こすのに脳がフル回転。帰りの車では充実感と同時に、どっと疲れを感じました。年ですね。

 各厩舎や育成場を見学させて頂いたことは、自分の牧場で実行している事柄を一つ一つ検証、反省する良い機会になりました。お邪魔した時間帯を問わず、待っていて下さった厩舎方々をはじめ、皆様快く案内して下さって、大変感謝しています。馬づくりに対するそれぞれの姿勢は、一緒に行ったスタッフにも大いに刺激になったようです。彼らから改善点や工夫の案が出たほかに、いろいろと見た中でも「千代田で働けて幸せです」と言ってくれたことは、私にとって何よりでした。先代から受け継ぎ作り上げてきたものが、決して間違ってはいなかったのだと思えました。

対面式馬房の新厩舎 ダービー2勝、皐月賞2勝の松山康久大先輩 調教に向かう菊沢隆徳Tr

週末、競馬場では私の出没がちょっとした話題になったようです。
「昨日トレセンに来ていたんだよ。珍しく千代田の社長が」
「声だけじゃなかったんだ。確かに来ていたんだ」
なんて、まるでお化けでも出たような言い方ですね。

 最後に、栗東の井上場長の言葉をご紹介します。現場では獣医としてたくさんの馬を診てこられました。
 「今まで3万頭の馬を診た。(最初は)オレが治してやっていると思っていた。でも実際にその12万本の肢に支えられていたのは、オレだったんだ。家族も含めて、馬に支えられて生きてるってわかった。」
馬のおかげで我々は生活できているということ。馬を通して、馬主さんを始め、たくさんの方々と繋がることができているということ。日々の仕事の上でも、常にその感謝の気持ちを忘れないでいきたいと思います。

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