ホーム>こぼれ話 >Best Luck by 飯田正剛

2014 #10

直感と強運

 今年も9月は米国ケンタッキー州レキシントンで行われる1歳セリ、キーンランド・セプテンバーセールに行ってきました。9月8日から13日間に渡って行われたセリで、名簿は全6冊の計4181頭。セレクトされたBook 1だけでも800頭近い数の1歳馬を見ることができて、とても勉強になります。前年の11月に見た新種牡馬の当歳が、1歳になってどのように成長しているかも見ることができますし、以前にセリで見た繁殖がどんな産駒を出したかも見ることができます。

 さて、そのセリ初日の8日。Thoroughbred Daily News(略してTDN)に当場の記事が載りました。7月に取材を受けていましたが、セリの間のTDNは、いつもセリの特集が組まれるので、このタイミングで6ページも割いてもらったことに驚きました。
   初めて渡米したのが20歳のとき。初めて米国のセリで馬を買ったのが32歳のときで、Secretariatの持ち込み馬と名種牡馬Lyphardの妹バーブスボールドを買いました。9月の1歳セリ、11月の繁殖・当歳のセリ、さらに以前は7月に1歳のジュライセールもあり、年に3回の主要なセリに通い始めて20年以上の月日が経ちます。

 記事のタイトルは “IIDA A SUCCESS STORY AT HOME AND ABROAD”
 こんな書き出しで始まっていました。(以下、“”青字は記事の訳です)

“ 伝統ある牧場のオーナーとして彼は一味違った存在といえるかもしれない。日本でブリーダーあるいはオーナーとして、上位の成績を収めているだけでなく、アメリカでも競走馬を生産し、走らせている数少ない日本人の一人である。 一流の血統と競走成績を誇る牝馬を米国のセールで購入する一方、売ることにも彼のトレードマークであるエネルギッシュさを発揮している。”
(この後に、今回上場した2頭の紹介と、09年に買った繁殖牝馬レディジョアンの紹介があります。※この記事が出た後、レディジョアンの血統からまた重賞勝馬が出ました!)

“ 日本とアメリカ、遠く離れたその距離、言葉の壁、そして経済的問題などを考慮した時、単にホースマンとしての情熱だけでふたつの拠点をキープしていけるだろうか。3歳から馬に乗り始めたという彼はその原動力を「サムライスピリット」と呼んでいる。毎年、良い繁殖牝馬を手に入れ、競走馬のレベルをアップするためには当然、困難は覚悟している。
「毎日が戦いです。」”

“ 彼は直感と運の強さで予定外の事態もプラスに変えてきた。”
 というのはタレンティドガールにNashwanを種付けしたときの話です。当初は米国に輸送してGulchを付ける手配をしていました。ところが、米国で伝染性子宮炎が発生して、予防として外科的処置をとらなければ入国できないことになったのです。それはあまりにも馬がかわいそうなので、配合相手をNashwanに変更して急遽、英国に向かうことにしました。時も時、湾岸戦争が勃発した1991年1月に出発。そうして生まれたのがホエールキャプチャの祖母エミネントガールです。

“ タレンティドガールを海外に送るプランについて、周囲の人たちからは「無謀だ、何を考えているんだ」と言われたが、国内にとどまっていてはその血統はいずれ行き詰ってしまう。海外の血を入れることの重要さを信じて実行した。”
 今でこそ、あのときの判断は正しかったと言えますが、兄妹でGTを獲り、牧場の基礎繁殖となるであろう馬を海外に運ぶリスクを考えると、覚悟のいる決断でした。

 私が海外で手に入れた馬は「直感と強運」の賜物です。入念に下調べもしますが、自分で歩き回って見て気に入った馬がいれば積極的に狙います。

“ 彼はヒシアケボノの甥にあたるElusive Qualityの当歳牡馬を買った。EVA陽性で日本には輸出できないのにも関わらずだ。そしてその牡馬にOtokogiと名付けた。サムライスピリットを意味するぴったりの名前だ。Otokogiは男気を発揮してキーンランド競馬場で勝利を挙げた。”
 日本で活躍した血統ですから、当然日本で走らせるのが前提だと思われたのでしょう。日本に輸出できないことを知った上で買ったので、記事の中では「アグレッシブ」だとか「恐れることなく」と表現されていました。

 初めて妻をキーンランドのセリに連れて行ったときには、記念にMedaglia d’Oroの1歳牡馬を買いました。「侍士の門(サムライノモン)」という九州の芋焼酎の名前を付けました。馬主さんに呼んで頂いたお花見で味わってからすっかりお気に入りの焼酎です。大型で仕上げるのが難しい馬でしたが、現在3歳。ホッカイドウ競馬で連勝中です。能力は伺えるので、古馬になって本格化することを夢見ています。

 記事はまったく客観的に書かれていますが、私の性格がよく滲み出ていると思います。セリの間、たくさんの方から「記事、読んだよ」「これからも一緒に頑張ろう」と声を掛けて頂きました。照れくさいけれど、うれしかったです。興味のある方はこのトピックスからもリンクしていますので、読んでみてください。キーンランドセールの雰囲気も感じることができますよ。



Thank you.
記者のMichele MacDonaldさん(中央)と
牧場案内 |  今週のレース |  現役馬近況 |  産駒一覧 |  写真館 |  こぼれ話 |  馬名募集 |  ホームに戻る
Copyright (C) Chiyoda Farm Rtd. All Right Reserved. 千代田牧場