会心のお買い物
師走も20日を過ぎ、残すところあとわずかとなりました。来週26日にはいよいよ、米国キーンランド・ノベンバーセールで購入した2頭の繁殖牝馬、サマーソワレ Summer Soiree とゴーイントゥザウィンドウ Goin to the Window が検疫を終えて牧場にやってきます。
サマーソワレは芝1800mのGⅠデルマーオークスの勝馬です。その前のAW1600mのGⅢを2着に10馬身差をつけて楽に勝つと、芝1700mのGⅢも8馬身半差で勝利。デルマーオークスでも向こう正面に入ったところで早々と先頭に立つと、レースレコードに0.2秒に迫るペースでそのまま押し切り1番人気に応えました。バランスのよい堂々たる立ち姿に凛とした顔つき、全身を使った無駄のないフォームが生み出すスピード。GⅠのタイトルホルダーであることを差し置いても、申し分のない良い馬だと思います。
父War Frontは、本馬を含め初年度産駒から3頭のGⅠ馬を出すと、その後は米国のみならず欧州でも産駒が活躍し、来季の種付料はついに25万ドルになりました。
一緒に上場されていた当歳も良い馬でした。こちらの父はWill Take Charge. 私が大好きだったUnbridled’s Songの後継種牡馬です。本年初年度の新種牡馬ながら32万ドルで落札されました。
ゴーイントゥザウィンドウは父Tapitのステークス勝馬です。全体的な馬体の良さはもちろんのこと、何よりTapitの産駒でこれだけトモ尻の長さ、幅ともにボリュームを持つ馬は見たことがありません。母父のIndian Charlieは、現在わずか2世代目の新種牡馬ながら総合リーディングで3位につけているUncle Moの父です。Indian Charlieの小さなツメはUncle Moの産駒にまでよく遺伝していますが、本馬にはその欠点がありません。祖母の父には日本でもおなじみのフォーティナイナーが入っています。続いて上場した当歳(本馬の初仔、父War Frontの牡)は50万ドルで落札されました。
2頭ともお腹にはMedaglia d’Oroの仔を受胎しています。今季・来季ともに種付料は15万ドル。牡牝ともに平均して走りますが、現在12戦11勝(うちGⅠ7勝)の3歳牝馬Songbirdや、Zenyattaと人気を二分したRachel Alexandraなど傑出した牝馬を出していることから、セリでは牝でも人気の高い種牡馬です。
さて、こちらは日本へは来ていませんが、じつはもう1頭当歳を買いました。ノベンバーセールではいつも勉強のために新種牡馬の当歳を重点的に見ることにしています。その中に1頭抜けて素晴らしい馬がいて、セリ当日にもう一度厩舎に見に行ったら、矢も楯もたまらなくなって買ってしまいました。ちょうど11月で私も還暦を迎えましたので、自分へのお祝いだ!と言い訳しつつ・・・。
父のDeclaration of Warは前出War Frontの2年目の産駒で、欧州でGⅠ2勝を挙げました。最後にBCクラシックに遠征し、初ダートながらハナ差、アタマ差の堂々の3着。産駒は明け2歳が初年度です。
落札してすぐまた厩舎に見に行き、翌日預託先に移動してからもまた牧場へ見に行きました。何度見ても嬉しくて、見るたびに「いや、いい馬だなあ」とつぶやかずにはいられない・・・今もまた牧場から届いた写真を見てニヤけています。いい馬を買うって本当にワクワクしていいものですね。
ノベンバーセールの前には、サンタアニタ競馬場のブリーダーズカップへCalifornia Chromeの応援に行ってきました。今年はここまでドバイワールドカップなど6戦6勝(うちGⅠ3勝)。
結果は残念ながら3歳牡馬Arrogateとの一騎打ちに敗れてしまったのですが、このArrogateの父がUnbridled’s Songなので、悔しい反面、感服の念とともに嬉しくもありました。
Unbridled’s Songを繋養していたTaylor Made Farmが、偉大なる種牡馬の亡き後を継ぐ者として迎えたのがCalifornia Chromeであり、 その父Lucky Pulpitの母系はUnbridled’s Songに繋がっています。Taylorたちも悔しさと感慨深さとが入り混じっているところだ思いますが、長年牧場を支えてきたUnbridled’s Songから世代を越えて台頭する産駒が出てきたことを喜ばないはずがありません。
2頭は来年1月末にペガサスワールドカップでの再対決が期待されています。このレース自体が初の試みでこれまでにないアイデアを実現したものなので、どういうものになるのか見ものです。
不定期更新ながら、今年も当コラムにお付き合い頂きまして誠にありがとうございました。来る年の皆様ならびに愛馬の健康とご多幸をお祈り申し上げます。