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2010 #01

明けましておめでとうございます。

新年を迎え、皆様お元気でお過ごしでしょうか?お正月休みは楽しまれましたか?
北海道は雪が降って寒い日が続いています。東京に住んでいる方には想像もつかないかもしれませんね。 「毎日が雪、しかも寒いのなんてごめんだ」と思う方々もいらっしゃるかもしれませんが、それはそれで楽しいもの。私のとっては、東京の人の多さや、混雑した電車のほうが勘弁です。朝のラッシュに耐え、会社では山積みの書類に囲まれる毎日…通勤だけでも大変なストレスではないかとお察しします。そんなストレスを解消するために、さて皆様は何をなさっているのでしょうか?やはり競馬に出かける?…そう、そうですよね。もちろん競馬ですよね!? 昨年12月は千代田牧場のお馬さんたちが頑張ってくれたおかげで、私の財布も膨らみました。

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ストレスを感じるのは何も人間ばかりではありません。競馬の主人公である馬たちも大変なストレスにさらされています。そのため、それぞれの馬に合わせて、様々なストレス解消法が考えられています。馬房の中で遊べるように、プラスチック製のボールや、りんごの形のおもちゃを壁に吊るしたり、ルームメイトとしてヤギやウサギを同居させたり。少し古い話で恐縮ですが、ジャパンカップに出走したイギリスの牝馬ユーザーフレンドリーは、日本滞在中、馬房の壁にかわいらしい鏡が掛けられていました。専用の素敵なバスケットに入れられてイギリスから運ばれてきた何着もの馬服はカラフルでお洒落。しかも、もちろん状況に応じてですが、1日に何回も着替えるのです。それらの品々は彼女にとって、人間からとても大切にされているという証のようなもの。ストレスを感じる遠征先でも「いつもと同じだよ」という安心感を与えてくれるものだったに違いありません。

さて、千代田牧場の馬たちも「これでもか」という位、愛されて成長していきますが、環境が変わればどうしてもストレスを感じますし、溜まってもいきます。例えば、子どもが親と引き離されるとき、つまり離乳はすべての生き物に与えられた試練ですが、少しでもその寂しさを和らげるために、千代田牧場の厩舎は隣の馬房にいる仲間の顔が見えるようになっています。それまではいつもお母さんと一緒。「でも、そろそろ子ども部屋が欲しいなあ」なんて思って一人になってはみたものの、寂しくて一晩中泣くことになってしまいました。だけど、隣の部屋を見れば仲間がいる。「少し安心」というわけです。

現役馬たちはといえば、私の所有馬だけでなく、オーナーの方々に買って頂いた生産馬の8割程が、休養のために千代田牧場に戻ってきます。生産馬だけではありません。スーパーホーネットも、冬は千葉の千代田牧場で過ごし、しっかりと調整した後、栗東の厩舎へと出掛けて行きました。昨年の千代田牧場は年間最多の70勝(アメリカでの勝ち鞍を含むと75勝)を挙げましたが、生産馬たちが過度のストレスを溜めこまないよう、トレセンと牧場との馬の入れ替えに注意を払っていることも、成績に大きく貢献したのではないかと思います。

激戦を終えて戻ってきた馬たちには、必ず抗潰瘍剤(サクロフト)を使用しています。人間と同様、馬もストレスは胃の不調につながります。現役馬だけではありません。生後2ヶ月程の当歳馬は、風邪や下痢などの不調がもとになってストレスを抱え、その結果起こる胃穿孔(胃に穴が開いた状態)によって、短い命を絶つこともあります。それも発症してわずか数日で…。ですから、当歳馬たちにも抗潰瘍剤は欠かせません。繁殖牝馬もそうです。難産の後には特に気をつけてあげる必要があります。昔、ある繁殖牝馬の初産がかなりの難産で、その後胃潰瘍を発症し、3日目に亡くなりました。解剖した胃の壁が蜂の巣のようになっていたのを今でもよく覚えています。

海外の牧場でよく見かけるのは、馬とともに牛を放牧している風景です。牛は放牧地に生えた雑草を食べてくれるという利点ばかりでなく、のんびり堂々としているので、一緒にいるとゆったりした気分になれるのではないでしょうか。これもストレス解消法のひとつですね。適度なストレスは生きていく上で必要なものです。しかし、適度とはいえ、いつもストレスを感じているようではたまりません。人間にも馬にも、心からリラックスできる時間が不可欠です。私たちのところに戻ってきた馬たちには、牧場にいる間はストレスフリーに、のんびりと次の戦いのための英気を養って欲しいと思います。

2010年はストレスフリーに行きましょう。くよくよせず、やさしい気持ちでおおらかに過ごそうではありませんか。人間がハッピーなら、馬たちもハッピーでいられます。…そう言いながら、私には実行できる自信がありませんが、皆さんにとって今年がハッピーな1年でありますよう、心からお祈りしています。今年も千代田牧場をどうぞよろしくお願い致します。

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注目の2歳馬として雑誌にも取り上げられた「ある牝馬の物語」のヒロイン・ソングオブプライズは脚を痛めてしまい、昨年内のデビューはかないませんでした。現在は、順調に回復していますので、楽しみにしていて下さい。応援、どうぞよろしくお願い致します。

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